ピエール・クレマンティ

北の橋 1981 ジャック・リヴェット映画・俳優

ジャック・リヴェット『北の橋』をめぐって

その意味ではリヴェットによる『北の橋』は、かつて74年に撮られた傑作 『セリーヌとジュリーは舟でゆく』からの続編、 とはいわないまでも、ファンタジー性やその虚構空間においては 内容は違えど、どこか地続きの映画構造のように映るだろう。 いずれにせよ、物語に容易に収斂されえない展開ながら 本能的な自由を求める奔放さでもって 観るモノを魅了してゆくリヴェットらしい即興性に満ちた 遊び心満載の、謎解き冒険譚であることは間違いない。

ベルトルッチの分身 1968 ベルナルド・ベルトルッチ映画・俳優

ピエール・クレマンティスタイル『ベルトルッチの分身』の場合

思い返せば、『暗殺の森』では、主人公の少年時代に、 撃ち殺したと言う思い込みでトラウマを与えることになる 元牧師で男色家リーノを、 ブニュエルの『昼顔』では、見金歯の変態男マルセルといった、 その強烈な役どころが頭から離れない人物を演じている。 兎にも角にも一癖ある俳優である。

暗殺の森 1970 ベルナルド・ベルトルッチ映画・俳優

ジャン=ルイ・トランティニャンスタイル『暗殺の森』の場合

原作はモラヴィアの『孤独な青年』だが、 映画も小説も、原題からすれば『順応主義者』と訳されるべきところを ニュアンスに誤差が生じている。 冷静にとらえ直した際には、明らかになるわけだが 本編は『順応主義者たる孤独な青年が、森の中の暗殺に立ち会う』話であり、 ファシズムの終焉とともに、少年期のトラウマによって苦しみ行き着いた、 ファシスト足らんとするその人生の幻想が、無化されてしまうのだ。 つまりは心理的ファシズムからの解放を意味する幕切れである。