アヌーク・エーメ

ローラ 1961 ジャック・ドゥミ映画・俳優

ジャック・ドゥミ『ローラ』をめぐって

石畳、路面電車、遊園地、霧にけぶる港、そして米兵水夫。 フランスの西、港町ナントの灰色の空の下、 どこからともなく潮騒の匂いを含んだ風が 石畳をなでるように吹き抜ける。 故郷を舞台にした、ジャック・ドゥミの処女作『ローラ』は、 そんな静かな風景に、アイリスインで幕を開けアイリスアウトで終わる。 これにわざわざヌーベルバーグの作品などと焚き付けたくはない、 そんな昔気質の哀愁がある。 人生の喧噪をひとまず忘れ、少し離れた場所、人々の生活のすぐ隣に、 確かに存在する夢と記憶のかけらが顔をのぞかせる瞬間の愛おしさ。 そこにドゥミは、少年のように、カメラというレンズ越しに、 ぼくらの見るべき“行間”をそっと提示してくれるのだ。

Les plus belles années d'une vie映画・俳優

クロード・ルルーシュ「男と女 人生最良の日々」をめぐって

クロード・ルルーシュの代表作にて名作『男と女』の その続編の続編いわば53年(33年)後の二人の再会ドラマである 『男と女 人生最良の日々』について書いてみよう。 いやあ、言葉にならないなあ、と思う。 余韻が広がり、それにまたため息が出るほどだ。 これを幸福の現象と言わずしてなんと言うべきか。 演技をこえて、二人の人生が映画空間で重ね合わさった 晩年の男と女の再会劇の感動は簡単に言葉では言い尽くせないのだ。