小津安二郎『彼岸花』をめぐって
『彼岸花』には、別段、それまでの小津スタイル、 そのテーマと違いがあるわけではない。 とはいえ、つとに洗練された印象がするのは、 あらゆるところに無駄がなく、 何より、嫌味なく、すべてが完璧に流れてゆく熟練の間合いで 究極に、形式と情感の間にみごとな融合がなされるという意味では、 小津映画のひとつの完成形を見る思いがするのだ。 どの作品も甲乙つけ難い魅力がある小津映画のなかでも、 この『彼岸花』がなかんずく大好きなのである。
『彼岸花』には、別段、それまでの小津スタイル、 そのテーマと違いがあるわけではない。 とはいえ、つとに洗練された印象がするのは、 あらゆるところに無駄がなく、 何より、嫌味なく、すべてが完璧に流れてゆく熟練の間合いで 究極に、形式と情感の間にみごとな融合がなされるという意味では、 小津映画のひとつの完成形を見る思いがするのだ。 どの作品も甲乙つけ難い魅力がある小津映画のなかでも、 この『彼岸花』がなかんずく大好きなのである。
人と人を結んでいる不確かなものを 確かにしていくというのが このドラマの実態だとするならば、 その正体こそが紛れもなくそこにあるのだと 実感するからであり、 『前略おふくろ様』は、 時代と俳優とスタッフによって生み出された 今絶滅危惧種のようなドラマであることはまちがいなく、 その昔、こんないいドラマがあったことを 僕は嬉しく思うし、 自分にも、また自分のおふくろさんにも 輝くような青春があったということを 今一度思い返すのであります。