ヴィクトル・エリセ『瞳をとじて』をめぐって
だれでも忘れられない映画というものがある。 ぼくにとって、ヴィクトル・エリセの『ミツバチのささやき』は そんな記憶に生き続ける一作品である。 スペインの映画作家ヴィクトル・エリセにとって、デビュー作であり 以後、約10年のスパンでポツポツと作品を撮りながら、 ここ約30年の歳月の沈黙を経て、完成させた『瞳をとじて』 満を持して、この寡黙な作家がようやくスクリーンに帰ってきてくれた。 今年83歳を迎えるエリセにして、長編4作目。
だれでも忘れられない映画というものがある。 ぼくにとって、ヴィクトル・エリセの『ミツバチのささやき』は そんな記憶に生き続ける一作品である。 スペインの映画作家ヴィクトル・エリセにとって、デビュー作であり 以後、約10年のスパンでポツポツと作品を撮りながら、 ここ約30年の歳月の沈黙を経て、完成させた『瞳をとじて』 満を持して、この寡黙な作家がようやくスクリーンに帰ってきてくれた。 今年83歳を迎えるエリセにして、長編4作目。
1973年製作スペイン映画『ミツバチのささやき』には 自分がこれまで見てきた映画の中でも特別な思いがある。 というのも、この映画を見てからというもの、 そのアナ・トレントその眼差しが 今だ心に住み着いて離れないからだ。
10年に一度しか撮れないのか、撮らないのか? 『みつばちのささやき』から10年後に『エル・スール』。 そのまた計ったように10年をかけ、 エリセが満をじして温めていた構想が テーマがかぶるということで、企画を断念せざるを得なかったのは 呪われた作家ゆえなのか? 幸い、そんな思慮深い作家が 気持あたらに手を伸ばしたもう一人の神秘があった。 スペイン美術を代表する画家アントニオ・ロペスである。