ロードムービー

「少年」 1969 大島渚映画・俳優

大島渚『少年』をめぐって

よさこい節のフレーズにも入っている、高知のはりまや橋で ひとりの少年が行き交う車を見定め、身体を張ろうとしている。 ドライブレコーダー搭載の自動車が当たり前の現代社会に かつては当たり屋なんていうベタな稼業が横行していたのだと いまの若い人たちは知らないかもしれない。 いうなれば、詐欺である。 いちゃもんをつけ、カネをせびる。 かつて、反社なひとたちがよくやっていた手口だが それを家族をあげてやっていたという実話を映画化した作品で、 大島作品の中でもぼくが好きな一本『少年』である。

顔 2000 阪本順治映画・俳優

阪本順治『顔』をめぐって

『顔』は、そんな正子がいつしか愛おしくなってくる映画である。 彼女の生き様に突き動かされるであろう人間たちは、 いみじくも、彼女の逃亡生活がはじまったところで 神戸の震災に見舞われた人々のような、 すべてを失い、生きる希望を見いだせない人々ばかりだ。 生きてさえいればなんとかなる。 そう、なんとかなるという、何の根拠もない自信こそが 救いになるのだと言わんばかりである。 ラストでのひとり浮き輪をしながら海を泳ぎきろうとする正子のロングショット。 そこからもがきながら必死に前へと進もうとする彼女のアップで話は終わる。 当然、彼女の人生は終わらない、続くのだ。 『顔』は福田和子の件とはちがい、フィクションであるがゆえに われわれに真の生きる勇気を与え続けてくれるだろう。

映画・俳優

バーバラ・ローデン『ワンダ』をめぐって 

ボタ山を歩く、米粒のように小さな一人の女をロングで捉えたショット。 彼女は数少ないであろう知り合いに金の工面をしようと向かうのだ。 よくみれば、頭にカーラーをつけたままである。 彼女は一応子持ちの主婦のようだが 家事をやらない、子育てもしない、飲んだくれている。 何かにつけ、覇気がない、いってみればオツムもちょっと弱いような女でさえある。 昔なら、こういうタイプの男は結構いた気がするが、 女というだけで、下げずまれる社会と時代背景のなかで 彼女は社会の周辺で、かろうじて生きている。 そんな女をヒロインにすえた一本の映画が『WANDA』である。