太郎・かの子・一平文学・作家・本

岡本かのこのこと

とりわけ、太郎は、母かの子の多大なる影響を受けている。 かの子は童女のようでいて、潔癖なまでに純粋を貫くがゆえに 周りの情緒をも狂わせる女の狂気を孕んで生きた。 本人は情愛の化身のように小説に身をぶつけ、 時には母として、時には恋人、あるいは娘、妹・・・ 眷族の垣根を超えて交わる魂の交歓を求め、 激しく、そして誰よりも太郎を愛した。 太郎もまた、芸術に挑むのと変わりないエネルギーを この母に傾注した。 もっとも、太郎はそれを対等な関係であり 通俗的な母と子の因果関係の馴れ合いではないと強調する。

André Breton 1896-1966文学・作家・本

アンドレ・ブルトンのこと

フランスの詩人、文筆家アンドレ・ブルトンのことを書くというのは、 それこそ実に気を遣う行為に思える。 それはおそらく生前のブルトンという人が実に気難しく、 多くの同胞たちを次々に追放したという シュルレアリスムの法王として権威を振りかざしたというような逸話から ただならぬ人物であったことを刷り込まれているからという 半分冗談のような事実から導かれた妄想だ。

ロピュマガジン【ろぐでなし】vol.31文学・作家・本

ロピュマガジン【ろぐでなし】vol.31

詩は言語でありながら、絶えず魂という肉体をもっている。 意思をもち、世界を変えることさえできる。 それは映像のなかにも、音楽のなかにも入り込んでいる。 むろん、生活、人生、人間のなかにある。 文学者や作家はもとより、真の詩人たちは言葉でそのことを伝えてきた。 そうした言葉の力に今一度、寄り添ってみたいと思うのだ。 僕の好きな文学者たちは、多かれ少なかれポエジーに貫かれた 地上の星たちなのだ。

若冲 五百羅漢図アート・デザイン・写真

伊藤若冲という画家

筆さばき、精巧さ、あのイキイキとした色や形。 何よりもあの多産な作品群。 そして、時代を超えたイマジネーション若冲ワールド。 何度見てもウットリする。 なにしろ、描くことが大好きで、 短命だった当時の平均寿命からすると、 八十五歳まで生きのびて、 その証を残した、というのも驚きだけど、 好きな絵にしか関心を示さなかった、 根っからの絵描きマニア、というのだから、 これぞ天分という他あるまい。 好きこそものの上手なれ、とはよく言ったもので、 それこそ、家業の青果商にはほとんど関心を示さず弟に譲り、 自らは芸事や酒に溺れることもなく、生涯独身で通したという。