ジャン=ピエール・メルヴィル『リスボン特急』をめぐって
傑作『サムライ』を覆う渋いブルーを彷彿とさせるかのように この『リスボン特急』のオープニングの銀行襲撃の際にも その同じ気配を漂わせるこのメルヴィルブルーのただならぬ気配に、 この映画もまた、遺作にして傑作へと導びかれるのか、と期待に胸を膨らませるも、 残念ながら、この映画はそれまでのメルヴィルらしいキレが不足していることに 次第にトーンダウンしてゆく。 ある種の失望を覚えながらも、こうして追悼の意を示すが如く 諦観せざるをえない思いから綴っている。