アート・デザイン・写真

女が階段を上る時 1960 成瀬巳喜男アート・デザイン・写真

成瀬巳喜男『女が階段を上る時』をめぐって

その上で、この映画における森雅之のグズグズ感、 仲代達矢の小生意気なニヒルっぷり 頑張って生きる女たちの周辺を巡って 男たちは絶えず甘い汁を吸おうと集まってくる。 女は人生に翻弄されながらもたくましく生きてゆく。 こうした一つ一つが積み重なって奇跡のように 上質で無駄のない日本映画の黄金時代を証明する作品に仕上がっている。

女と男のいる舗道アート・デザイン・写真

ジャン=リュック・ゴダール『女と男のいる舗道』をめぐって

要するに『女と男のいる舗道』は ゴダール流のアンナ・カリーナへの愛を汲み取らねばならない。 ルイズ・ヘアーにさせ、 映画館でドライヤーの『裁かるゝジャンヌ』を見て涙をながさせ 娼婦のまねごとをさせ、そしてあっさりと死の洗礼を浴びせる。 非常なのか、クールなのか、 そんなレトリックにゴダールとカリーナの六年間の愛の歳月をみる。

Om det oändliga 2019 ROY ANDERSONアート・デザイン・写真

ロイ・アンダーソン「ホモ・サピエンスの涙」をめぐって

ざっと話を33話分を一応言葉で追ったものの それで面白さが伝わるとは到底思えないところである。 さらに丁寧に情景を描写できなくもないが、 そこは映像を見てそれぞれが感じ取ればいい。 そこは主観が入るので簡易的に並べてみたにすぎない。 もっとも、映像でそれをみたとて退屈を感じる人もいるだろうし これがなに? 何が言いたいの? と思う見方もあるだろう。 ロイ・アンダーソンのスタイルは、 概ね「散歩する惑星」からほとんど何も変わってはいない。 映画としてはかなり特殊な形態であり、 斬新でありながらも、見る人を選ぶ映画でもあるんだと思う。

TRAFIC JACQUE TATIアート・デザイン・写真

ジャック・タチ「トラフィック」をめぐって

内容からすれば、おしゃれなコメディータッチのロードムービー風 とでも言えるのかもしれないけどね。 やっぱし、これは日本的ではない なんてーのか、インテリジェンス、ウイット、ユーモア ジャンルの型にはめようとすると限界があるんだけど ぼくはそれを「ユロビートムービー」と名付けよう。 オフビートタッチのロードムービー、うん、ま、そんなところ。

若冲 五百羅漢図アート・デザイン・写真

伊藤若冲という画家

筆さばき、精巧さ、あのイキイキとした色や形。 何よりもあの多産な作品群。 そして、時代を超えたイマジネーション若冲ワールド。 何度見てもウットリする。 なにしろ、描くことが大好きで、 短命だった当時の平均寿命からすると、 八十五歳まで生きのびて、 その証を残した、というのも驚きだけど、 好きな絵にしか関心を示さなかった、 根っからの絵描きマニア、というのだから、 これぞ天分という他あるまい。 好きこそものの上手なれ、とはよく言ったもので、 それこそ、家業の青果商にはほとんど関心を示さず弟に譲り、 自らは芸事や酒に溺れることもなく、生涯独身で通したという。

『虎図』長沢芦雪アート・デザイン・写真

長沢芦雪という画家

そんな波乱万丈の生涯を送った芦雪だが、 残された絵の腕前には唸らされる。 とりわけ270点にもおよぶ作品を残した 南紀滞在での充実期の、 その代表が「虎図」であり「龍図」である。 中には晩年「山姥」のようなグロテスクな作風もあれば 大の犬好きであったこともあって 「白象黒牛図屏風」の横たわる大きな牛のふところに ちょこんと佇むミニュチュアの子犬をはじめ、 現代でも人気を博すようなかわいい犬の絵も散見している。 そんな芦雪のことを想像すると、必ずも悪い人間だと思えなくなってくるし 憎めずふと愛おしさが募ってくる、そんな不思議な魅力があるのである。

瑛九夫妻アート・デザイン・写真

瑛九という画家

EI-Qこと瑛九という、ちょっと変わったペンネームの画家がおりましたとさ。 主に抽象画から版画、印画紙の特性を生かしたフォトグラムまで まるで光のごとくわずか48年の生涯を駆け巡ったアーティストである。 いわゆるフォトモンタージュというという マン・レイが試みた前衛的手法を新たに再構築したような世界を垣間見れば 瑛九もまた“光”に魅了された男であったことを理解するだろう。 もっとも、その作風を見ていると、 思わず影絵の男と言っていいのかもしれない。 どこかで観た風景ともいうべき物語が展開されている。