遺作

欲望の曖昧な対象 1977 ルイス・ブニュエル映画・俳優

ルイス・ブニュエル「欲望の曖昧な対象」をめぐって

物事が成就する事を、唐突に中断させるのはお手の物、 簡単にできるであろうことができなくなる可笑しさ。 蛇の生殺しのような寸止め状態、 そんなシチュエーションを意地悪く愉しみながら 観るものを不安にさせるような演出がお好きなようで、 『皆殺しの天使』では部屋から出られなくなったり 『昇天峠』ではバスがなかなか目的地につかなかったり 『ブルジョワジーの密やかな愉しみ』ではなぜか食事にありつけなかったり、 そしてこの遺作にて傑作たる『欲望の曖昧な対象』では、 目の前の女をついぞモノにできず 性に翻弄されてしまうという展開に、やきもきさせられる。 それにしてもブニュエルという人は真面目にふざけるひとである。

トリコロール/赤の愛 1992 クシシュトフ・キエシロフスキ映画・俳優

キエシロフスキ『トリコロール/赤の愛』をめぐって  

キエシロフスキによるトリコロール三部作 その最終章を飾るのが「赤の愛」。 ここでは一度失った愛の形を取り戻す過程が描き出されている。 その色からも、“博愛”と言うテーマで描かれてはいるのだが、 ラストのサプライズシーンを含め、 遺作として全てを包み込むような集大成の思いが強く感じ取れる。