赤線地帯

赤線地帯 1958 溝口健二映画・俳優

溝口健二『赤線地帯』をめぐって

日本が誇る大監督溝口健二の遺作『赤線地帯』を久しぶりに鑑賞。 この作品は、溝口の代表作としての位置づけは低いものであるが 今見ると、これはこれで溝口らしい作品だといえるし、 あたしゃ嫌いじゃないな。 要はこの映画、売春禁止法をめぐる娼婦(女)たちをめぐる人間模様であり、 決して、エロティシズムがどうの、そんな映画ではないし、 むしろ、リアルな人間ドラマと、 風俗史としての側面において秀逸な映画とさえ思うのだ。 ちなみに日本で「売春防止法」が公布されたのが昭和31年(56年)で 実際に施行されたのが二年後の昭和33年(58年)、 で、この映画の上映が1956年というわけで、 当時の赤線業者および世論の空気感は感じ取れる。 その道を生業とする者にとってはまさに死活問題だったのだ。

ロピュマガジン【ろぐでなし】vol.39 終活への旅路、遺作映画特集映画・俳優

ロピュマガジン【ろぐでなし】vol.39 終活への旅路、遺作映画特集

最近では、若い人たちの訃報もちょこちょこ耳に入ってくるし 年齢はこの際関係ないのかもしれないが、 「霊界通信」のスヴェーデンボリのように、あの世と通底でもして 自分の死に際がいつなのかを事前に知っていればいいのだが、 かくいう僕自身も、あとどのくらいこの世の地を踏めるのだろう、 そんなことをよぎる年齢になってきた。 ある程度は覚悟というか、 準備というか、日々そんな思いを静かに抱えながら しっかり芽生え出している自らの人生の枝先をじっと見つめているのだ。