赤い天使

若尾文子 1933-映画・俳優

若尾文子小論法

ここまで、勝手にわが偏愛女優小論を重ねてきたが トリを飾るのはこの人しかいない。 若尾文子については、ここでは彼女の主演作品のなかで、 何度も言及し、ひたすらその思いを綴ってきた。 とりわけ、増村保造という映画作家の元で放った 強烈な印象を中心に、思いを傾けてはきたが、 本来、彼女は、一つのジャンル、傾向に収まりきるような女優ではない。 それこそ、舞台から、テレビドラマ、CMなどをこなす、八面六臂の活躍は 昭和の乗りをこえて御年90の大台にも突入している。 溝口健二作品では、女優道を仕込まれ、 小津や川島雄三といった名匠のもとでキャリアを重ねながら 本領たる増村作品にで合う。 『青空娘』にはじまり『最高殊勲夫人』『卍』といったものから、 以後中心にかたる日本女性にはない、強さをもった役で 印象を決定づける作品はもとより、 さらには吉村公三郎や市川崑といった監督の元では 洒脱なコメディエンヌとしての才も十二分に発揮してきた、 文字通り日本映画の隆盛期を支えてきた大女優である。

赤い天使 1966 増村保造映画・俳優

増村保造『赤い天使』をめぐって

文字通り若尾文子扮する西さくらこそが「赤い天使」なのであるが、 彼女の場合は、ただ単に負傷兵の介護という枠に収まらず、 負傷した兵士の命をつなぎとめるために 手足を切断する際には、暴れ発狂する患者を抑える役回りはもちろん 挙げ句には、性的な処理までこなさねばならない。 おいおい、いやはややれやれである。 天使家業はラクではないのだ。 まさに身体を張ったその使命感には頭が下がる。 が、この映画が単に反戦映画の枠を超えている部分であり、 それを折れずに遂行する強さがどこまでも美しい。

映画・俳優

増村保造における若尾文子をめぐって

なんといっても二十作品をも数える 増村作品での彼女の強度を持った眼差しの数々が、 とりもなおさず観たいのだ。 それら増村作品における若尾文子演じる代表的な「女」たち、 なかでも『妻を告白する』『夫はみた』『清作の妻』『刺青』『赤い天使』における、 彼女の生きざまには、ちょっと凄いまでの感動がある。 いやほんとうに、物凄く、凄い。