藤田敏八

ツィゴイネルワイゼン 1980 鈴木清順映画・俳優

鈴木清順『ツィゴイネルワイゼン』をめぐって

今日のようなストーミング社会はいったんおいておいて もしもこの世に、映画館なる至宝の闇空間がなかったなら そこに、見せもの小屋のような存在がかえって繁盛するのかもしれない。 妖しげで希少価値のある場所。 そこに見合うプログラムだが、なにげなく禁断の匂いが立ち上りさえれば、 甘い樹液を求む昆虫たちのように、自ずと人は集まってくるかもしれない。 その際、真っ先にこの鈴木清順の出し物こそが 生き生きとその臨場感を醸し出してくれるであろうことはお約束できる。 実際に、プロデューサーのふとした思いつきで 巨大なテント会場での公開となったのが『ツィゴイネルワイゼン』なのである。 配給業者も興行者もいない、文字通りの芝居じみた興行こそが この映画の本質には相応しいのだ。

バージンブルース 1974 藤田敏八映画・俳優

藤田敏八『バージンブルース 』をめぐって

この『バージンブルース』は こうしたバージンか非バージンかわからないような年頃の、 ちょっと素行のよろしくない女の子たちを主人公に据えた さすらいのロードムービーかと思いきや、 実は、これはたわいもない中年男のロマン、 いってみれば、妄想によって男の哀愁を掻き立てる そんな作品になっているのはざっと紹介した通り。 それを演じる中年男、平田自身が いたって「バージン脳」のダメ男であり、 困ったちゃんと結びついてしまうところが 同じ男としてはなんとも微笑ましいのである。