荻上直子

波紋 2023 荻上直子映画・俳優

荻上直子『波紋』をめぐって

水というのは、不思議な物質だな、と思う。 透明で、無色で、流れて、1滴でも大量でも中身は変わらない。 だが時に人や街さえ飲み込む力がある。 それは集合化した水のもつ脅威というよりも 日常の奥深くに宿るひとつの魔力なのかもしれない。 一見、静かにそのブルーを基調にしたトーンの室内、 あるいは衣装、水を通して淡々と繰り広げられる家族の群像劇、 荻上直子による『波紋』を観終わったあと、 なぜだか水についてぼんやり考えてしまうのだ。 ああ、こんなにも何気ない水が、 情熱を帯び、人の生活を揺さぶるものだったのか、と。

ロピュマガジン【ろぐでなし】vol.41 ポストパンデミック後編:シネマでぶらり、映画鑑賞特集映画・俳優

ロピュマガジン【ろぐでなし】vol.41 ポストパンデミック後編:シネマでぶらり、映画鑑賞特集

コロナ禍においては、色々な制限が課されていたこともあり、 映画館へ足を運ぶ機会も意欲も、ずいぶん減ってはいたが、 最近では、気分的にも大きなスクリーンで集中してみる映画体験を 積極的に回帰している自分がいる。 とはいえ、映画を見たい、手軽に見たいという欲望が無くならないが故に、 ストリーミングに頼るという生活もまた、なくなる事はない。 作品を何度も見直すことができるし、 どこでもかからないような、貴重な作品さえも手が届く。 何より、映画を愛するものにとって有難いまでの仕組みが多く提供されている。 いずれにせよ、1本の映画作品の価値は、 形態や見方を変えても変わるわけではない。 その本質を見落としてしまえば、単なる時間の消費に過ぎなくってしまう。