秋吉久美子

さらば愛おしき大地 1982 柳町光男映画・俳優

柳町光男『さらば愛おしき大地』をめぐって

迫り来る運命に抗うことができないのはなにも幸雄だけではなく、 そんな男に惚れてしまった秋吉久美子演じる順子もまた同じである。 逆に、その運命の波に飲み込まれてゆく家や大地のたたずまいは あたかも神のように、ただひたすらに不穏に受け止めるしかないのだ。 この映画のたたずまいそのものを終始支えているのはそれだ。 当時からそれ以後へと移りゆく変遷のなかで、 「さらば愛しき大地」を未だ色あせない傑作として記憶にとどめているのは、 何人も抗えぬ大地の重みそのものであり、また美しさなのだと。

バージンブルース 1974 藤田敏八映画・俳優

藤田敏八『バージンブルース 』をめぐって

この『バージンブルース』は こうしたバージンか非バージンかわからないような年頃の、 ちょっと素行のよろしくない女の子たちを主人公に据えた さすらいのロードムービーかと思いきや、 実は、これはたわいもない中年男のロマン、 いってみれば、妄想によって男の哀愁を掻き立てる そんな作品になっているのはざっと紹介した通り。 それを演じる中年男、平田自身が いたって「バージン脳」のダメ男であり、 困ったちゃんと結びついてしまうところが 同じ男としてはなんとも微笑ましいのである。