永瀬正敏

ジム・ジャームッシュ 1953-映画・俳優

サロン de ジム・ジャームッシュ

80年代、ジャームッシュの登場は、そのスタイリッシュな映像と音楽で 日本でもミニシアターブームにも乗じて、大々的にとりあげられ 新しい映画の夜明けを見たものだった。 まずはスクリーミン・J・ホーキンスの音楽と、そのオフビート感覚で席巻した 『ストレンジャー・ザン・パラダイス』の衝撃が忘れられない。 ジャームッシュが現れてくれたおかげで、 ぼくらは映画というものの敷居を、良い意味でフラットになったことを体験した。 素人同然のミュージシャンたちを俳優として起用し、 ストーリー仕立ての既成を取っ払ったスタイルは実に新鮮だった。 永瀬正敏と工藤夕貴のカップルが堂々主人公に抜擢され スクリーンに登場した『ミステリー・トレイン』には、 なんだかいい知れないうれしさと興奮を覚えたものだ。 人種や職種や文化を特別なものとして描かないその自由さのなかに、 ぼくらの世代は素直に共感をもったのだ。

箱男 2024 石井岳龍文学・作家・本

石井岳龍『箱男』を視る

YOU TUBE上に、生前の安部公房の公演の記録テープが残されており 『箱男』の創作エピソードが語られている。 それを拝聴していると、 箱をかぶった浮浪者の姿を目撃した作家安部公房の頭の中には まだ理路も主題もなかったのがよくわかる。 安部は、この視覚的衝撃を「気味の悪い存在」として自分の中に取り込み、 それを引き延ばし、概念化していくのだが、 その過程が容易ではなかったことは、要した5年の歳月が証明している。

Paterson 2016 jim jarmusch映画・俳優

ジム・ジャームッシュ『パターソン』をめぐって

この『パターソン』と言う映画は これまでのスタイルに即した、ジャームッシュらしい作品で、 特に新しいスタイルなんてどこにもない。 なのに、とても新鮮で愛くるしく心地よい。 晩年に向かうにつれ、 同じようなテーマを繰り返し、 円熟の極みとしての映画にこだわった あの小津調の空気感にも通じる。 ただ、こちらもそれなりに歳をとって ものの見方にも微妙な変化があり そうしたこなれた見方、と言うのはあるのかもしれない。