エドワード・ヤン「ヤンヤン夏の想い出」をめぐって
エドワード・ヤンが志半ばで遺した『ヤンヤン 夏の想い出』 原題『Yi Yi: A One and a Two』の響は、その副題の通り、 まるで人生という音楽が静かに始まるリズム、掛け声のように入ってくる。 結婚式で始まり、出産、そして最後は葬儀という、 およそ、だれもがたどる人間の生の営みのアウトラインが敷かれている。 ひとつ、そしてふたつ、その道程。 短くも、だが決して軽くはないひとつひとつのドラマ。 ヤンが最晩年に至ってたどり着いたそのリズムは 雄弁な言葉やドラマティックな事件ではなく、 日常のなかにそっと忍び込む影のような問いかけであり 観る者の胸にじんわりと染みわたる家族の群像風景である。