『Ryuichi Sakamoto: CODA』をめぐって
坂本龍一の音楽は実に幅広い。 そのアルバムの中では、最も支持するのは 『B-2UNIT』当たりの空気感を 個人的には今尚敏感に想起しているのであるが、 その音のエッジたるや、到底病気を経た、 ある種覚悟を決めたリアルサカモトからは 程遠いような先鋭的な音で構成されている。 まさに教授たる名の全盛期の実験的、冒険的、野心的なサウンドに こちらも若き日の興奮が今も呼び起こされてはくる。
坂本龍一の音楽は実に幅広い。 そのアルバムの中では、最も支持するのは 『B-2UNIT』当たりの空気感を 個人的には今尚敏感に想起しているのであるが、 その音のエッジたるや、到底病気を経た、 ある種覚悟を決めたリアルサカモトからは 程遠いような先鋭的な音で構成されている。 まさに教授たる名の全盛期の実験的、冒険的、野心的なサウンドに こちらも若き日の興奮が今も呼び起こされてはくる。
大島渚の、微塵もクリスマスらしさを感じさせない問題作 『戦場のメリークリスマス』を、映画館で観たのは随分と昔の話で、 いま頭に残っている内容の方はというと、 こころもとなく曖昧なところだが、 なんとなく、大島渚らしくない映画だったような気がしている。
それこそ音楽なら豊富に浮かんできるが、 映画や文学となると、やれ恋人と、やれ家族と といった副次的快楽を共有するようなものを 得意げに差し出すような気の利いた感性は持ち合わせおらず、 ひたすら、己の琴線に触れてくる、 微妙なものを独断的、偏愛的に取り上げているに過ぎない。 しかし、あえて言葉を添えるなら、 これほど殺伐とした世の中で、 どこへ言っても他人の視線、他者との関係性を無視できない中で まずは、自分という個をしっかりとあらわにして 超然たる思いで、この年末を軽やかに乗り切りたい。