岡本かのこのこと
とりわけ、太郎は、母かの子の多大なる影響を受けている。 かの子は童女のようでいて、潔癖なまでに純粋を貫くがゆえに 周りの情緒をも狂わせる女の狂気を孕んで生きた。 本人は情愛の化身のように小説に身をぶつけ、 時には母として、時には恋人、あるいは娘、妹・・・ 眷族の垣根を超えて交わる魂の交歓を求め、 激しく、そして誰よりも太郎を愛した。 太郎もまた、芸術に挑むのと変わりないエネルギーを この母に傾注した。 もっとも、太郎はそれを対等な関係であり 通俗的な母と子の因果関係の馴れ合いではないと強調する。