黒澤明『赤ひげ 』をめぐって
黒澤作品のなかでも、人気、評価の高い1本である『赤ひげ』は この年(1965年)の日本映画の興行収入ランキングで堂々第1位を記録している。 モノクロ作品にもかかわらず、髭を赤く染めてまで挑んだという 世界のミフネ演ずる赤ひげ先生を筆頭に、 藤原釜足、志村喬、左卜全、土屋嘉男、山崎努など 馴染みの黒澤組俳優たちがしっかり脇を固め、 そこへ若き医師役に若大将こと加山雄三を中心に その両親には、ちょっとした顔出し程度とはいえ 田中絹代に笠智衆まで贅沢にあてがわれている。 大根で頭を殴られるほどの強欲非道な淫売屋女将に杉村春子、 小津や溝口作品では見ることにない体当たりの狂女に香川京子など、 黒澤作品には珍しく、色とりどりの女たちによる映画でもある。