神代辰巳『四畳半襖の裏張り』をめぐって
春本風味を下敷きにしつつも、神代辰巳が 日活ロマンポルノの枠内でうまく撮り上げたこの作品、 そこに男と女の睦み事があっても、それだけじゃない。 観ればわかるが、猥雑とは似て非なる風情、情緒が漂うのだ。 本編は荷風の得意とした「入れ子細工」をとり、 旦那と芸者との“粋な”遊びを中心に 軍人と芸者との哀しき逢瀬、 老練と若い芸者の芸道をめぐるやりとりなどが 1時間強のなかに色とりどり詰め込まれている。
春本風味を下敷きにしつつも、神代辰巳が 日活ロマンポルノの枠内でうまく撮り上げたこの作品、 そこに男と女の睦み事があっても、それだけじゃない。 観ればわかるが、猥雑とは似て非なる風情、情緒が漂うのだ。 本編は荷風の得意とした「入れ子細工」をとり、 旦那と芸者との“粋な”遊びを中心に 軍人と芸者との哀しき逢瀬、 老練と若い芸者の芸道をめぐるやりとりなどが 1時間強のなかに色とりどり詰め込まれている。
これがあの神代辰巳の世界であり、 たまたま日活ロマンポルノというだけのことで、 仮にポルノという称号のみで遠ざけられているとしたら それはあまりに哀しい現実だ。 切なすぎるではないか。 映画という名の情熱。 男と女の情熱。 かつてそれら思いを互いに求めあった結晶の産物。 映画好きなら見て損はない、赫の他人の睦みあい。 うーん、豊かな時代があったものだ。