鈴木清順『夢二』をめぐって
大正ロマン三部作、最後を飾るこの『夢二』は 清順愛好家からも、全2作からすると、 少し物足りないという声も聞こえてくるが これはこれ、清順節は相変わらず色濃く反映されている。 その絢爛豪華な美術にはうっとりするばかりだ。 女性陣の着物姿はもとより、装飾へのこだわりは随所にみられる。 なかでも、柱から手を離すと夢二の絵が現れるモンタージュや 廃墟での傾きベットでのいびつな情事、 黄色いボートがいきなり立ったり、それこそ十八番の色とりどりの襖だったり、 夢二の分身に絵を描かせたりと、妖しさ満載のトリックは健在である。