ローラ

ローラ 1961 ジャック・ドゥミ映画・俳優

ジャック・ドゥミ『ローラ』をめぐって

石畳、路面電車、遊園地、霧にけぶる港、そして米兵水夫。 フランスの西、港町ナントの灰色の空の下、 どこからともなく潮騒の匂いを含んだ風が 石畳をなでるように吹き抜ける。 故郷を舞台にした、ジャック・ドゥミの処女作『ローラ』は、 そんな静かな風景に、アイリスインで幕を開けアイリスアウトで終わる。 これにわざわざヌーベルバーグの作品などと焚き付けたくはない、 そんな昔気質の哀愁がある。 人生の喧噪をひとまず忘れ、少し離れた場所、人々の生活のすぐ隣に、 確かに存在する夢と記憶のかけらが顔をのぞかせる瞬間の愛おしさ。 そこにドゥミは、少年のように、カメラというレンズ越しに、 ぼくらの見るべき“行間”をそっと提示してくれるのだ。

ロピュマガジン【ろぐでなし】vol.45 空想巡回映画館 ただいま上映中映画・俳優

ロピュマガジン【ろぐでなし】vol.45 空想巡回映画館 ただいま上映中

やはり、秋はいい。いいのだ、秋。 そんなことを静かに噛み締めながらも、 やはり、モノには道理、そして移ろいがあり、 それを感じることは幸せなことであり、 それを感じ取れる日本という国が年々愛おしくなっている。 幸い、ようやく、不穏な空気、気配が開けそうな世の夜明けを横目に 希望のわく、そんな思いと、少し憂いを滲ませるという相反する 複雑な思いもかくさずに、サウダージな詩的なひとときを 言葉に託したいと思う。