ビュル・オジエ

『マルグリット・デュラスのアガタ』1981 マルグリット・デュラス映画・俳優

マルグリット・デュラス『マルグリット・デュラスのアガタ』を視る

この声はデュラス自身のものである。 映像にあるのは、そのフィルムにある身体性、 つまりは言葉に託された愛だけである。 ブラームスのピアノ曲を伴って妹、ビュル・オジエが、そこにいる。 そして、もうひとり、兄であるデュラスの恋人ヤン・アンドレア。 そこにいるのはこの二人しかいない。 何一つ発しない登場人物に全てを託せてしまうのだ。 これは映画だろうか? 文学なのだろうか? なんという共犯関係なのだろうか? テクストの快楽、映画の快楽との共鳴がそこにはある。 確かにある。

北の橋 1981 ジャック・リヴェット映画・俳優

ジャック・リヴェット『北の橋』をめぐって

その意味ではリヴェットによる『北の橋』は、かつて74年に撮られた傑作 『セリーヌとジュリーは舟でゆく』からの続編、 とはいわないまでも、ファンタジー性やその虚構空間においては 内容は違えど、どこか地続きの映画構造のように映るだろう。 いずれにせよ、物語に容易に収斂されえない展開ながら 本能的な自由を求める奔放さでもって 観るモノを魅了してゆくリヴェットらしい即興性に満ちた 遊び心満載の、謎解き冒険譚であることは間違いない。