ジュリー

土を喰らう十二ヵ月 2022 中江裕司文学・作家・本

中江裕司『土を喰らう十二ヵ月』をめぐって

水上勉の『土を喰らう日々』というエッセイがベースである。 そのエッセイは、若き水上が禅寺で覚えた精進料理を紹介していて 単なる料理本というわけではない。 その想いはおそらくは中江裕司にもあり、 脚本はむしろオリジナルに仕上がっている点でユニークである。 水上勉という作家を特に意識したことはなかったが、 少年期に禅寺で修行体験を元にした川島雄三『雁の寺』を初め、 吉村公三郎『越前竹人形』、はたまた内田吐夢『飢餓海峡』などで多少は触れている。 この作家の食を通したどこか仏教的な生き様に、共感できる自分がいる。 食がテーマとはいえ、これはある種、人生訓でもあるからだ。

鈴木清順「夢二」1991映画・俳優

鈴木清順『夢二』をめぐって

大正ロマン三部作、最後を飾るこの『夢二』は 清順愛好家からも、全2作からすると、 少し物足りないという声も聞こえてくるが これはこれ、清順節は相変わらず色濃く反映されている。 その絢爛豪華な美術にはうっとりするばかりだ。 女性陣の着物姿はもとより、装飾へのこだわりは随所にみられる。 なかでも、柱から手を離すと夢二の絵が現れるモンタージュや 廃墟での傾きベットでのいびつな情事、 黄色いボートがいきなり立ったり、それこそ十八番の色とりどりの襖だったり、 夢二の分身に絵を描かせたりと、妖しさ満載のトリックは健在である。