コンパートメントNo.6

『コンパートメントNo.6 』2021 ユホ・クオスマネン映画・俳優

ユホ・クオスマネン『コンパートメントNo.6』をめぐって

あれはユホ・クオスマネン監督『コンパートメントNo.6』と同じく90年代だった。 まだ携帯もSNSもない、前時代的な香りをどこかで残していた時代だ。 それでもヨーロッパ映画ではしばし、コンパートメントそのものが ドラマ性が滲む空間として記憶している。 ヴェンダースの『アメリカの友人』での列車内の壮絶な殺人、 ロブ=グリエの『ヨーロッパ横断特急』やブニュエルの『欲望の曖昧な対象』では 語り部の空間そのものとして使用されていたし、 あれはコンパートメントではないにせよ、 リンクレーターの『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離』では ふたりの恋のきっかけがこの列車によって始まっていたのを思い出す。 そんなストーリーテラーには欠かせない空間においての ボーイミーツガール映画の顛末、はたして結末はいかに?