アントニオーニ

モニカ・ヴィッティ 1931-2022映画・俳優

モニカ・ヴィッティ小論法

一時期“ツンデレ”という言葉がもてはやされたが、 ぼくにとっての元祖ツンデレ女優はモニカ・ヴィッティ、その人である。 彼女を思い浮かべるとき、多くの観客はまず、 沈黙の中に立ち尽くす姿を想起するだろうか? 無機質な建築、荒涼とした風景、途切れがちな会話。 その中心で、彼女は何かを語ることも、激しく感情を噴出させることもなく、 ただ世界と噛み合わない感受性として佇んでいる。 それは、ミケランジェロ・アントニオーニ映画におけるヴィッティであり ふたりの巡り合いが生んだ、 20世紀後半の映画史に燦然と刻まれし、最も象徴的な「虚無の女性像」である。

赤い砂漠 1965 ミケランジェロ・アントニオーニ映画・俳優

アントニオーニ『赤い砂漠』をめぐって 

モニカ・ヴィッティ演じるジュリアナは 裕福な家庭の人妻だが、精神に病を抱えていて のっけから、子供と連れ立って歩く途中に、 見知らぬ男の食べていたパンを買いとって 草陰で貪り食う、そんなちょっと異様なシーンから始まる。 夫は、交通事故によるノイローゼだと言っているが、 必ずしもそうではないということが次第にわかってゆく。 病院に入院していたのも、どうやら自殺未遂からのことで、 夫との間にも、すでにすれ違いの溝が深く刻まれているのだ。