佐藤二朗

あんのこと 2024 入江悠映画・俳優

入江悠『あんのこと』をめぐって

入江悠の映画『あんのこと』を観たとき、 街を彷徨う一人の女の子の後ろ姿に言い知れぬ孤独を感じた。 シャブ、売春、不登校、彼女の闇はことのほか深い。 ぼくはその“誰か”の視点でこの映画を受け止めたいと思った。 それはヴェンダースの『ベルリン・天使の詩』のような、 誰にも知られず、触れられず、完全な他者として ただ見つめることしかできない天使の視座として、 あんという女の子を見届けようと思った。 でも結局、ぼくらは何もできないということを知るだけである。 この世界では、それは絶望という言葉に置き換えられる

さがす 2022 片山慎三映画・俳優

片山慎三『さがす』をめぐって

映画を見るにあたって、なんの前情報もなかったからか、 最後まで見終わって、とても驚いた。 日本映画もここまできたか、それぐらいの重厚な力量を汲み取ったわけだか、  なるほどコリアンノワールな雰囲気からも、 片山監督は、ポン・ジュノの元(「母なる証明」)に助監督について、 現場ではかなり有能ぶりを発揮していたというし、 その後、撮った初長編『岬の兄弟』も続け様に見たが、これまた驚いた。 共に内容は重いが、日本映画の未来に大いに希望を抱かせる、 なかなか凄い監督が現れたものだ。