ヴィム・ヴェンダース『PERFECT DAYS』をめぐって
有名建築家によるトイレプロジェクトの一環として製作された 日独合作の映画『PERFECT DAYS』、バックはTOTOとUNIQLO。 舞台は日本、東京。 日本映画と言っても差し支えがない。 主役は役所広司、カンヌで主演男優賞を受賞している。 監督はあのヴィム・ヴェンダース。
有名建築家によるトイレプロジェクトの一環として製作された 日独合作の映画『PERFECT DAYS』、バックはTOTOとUNIQLO。 舞台は日本、東京。 日本映画と言っても差し支えがない。 主役は役所広司、カンヌで主演男優賞を受賞している。 監督はあのヴィム・ヴェンダース。
その日、僕は雨の降る京都の街に降り立ち、 二条城を舞台にしたアンゼルム・キーファー展『ソラリス』へと向かった。 それは単なる美術展を超える、一つの事件のようなものだという直感があったが、 果たして、どんなものなのか、あらかじめ情報などほぼないままに足を運んだ。 場はまさに、時空を超えて響く「詩的な修復儀式」を呼び覚まし、 歴史の焦土に立ち尽くす者のための沈黙のレクイエムとして、 まるで、歴史の裂け目を埋め合わせるかのような巨大な作品が 谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』を思い出すまでもなく、 重く陰影を帯びながら、奥ゆかしいまでに場に佇んでいた。
何に対してなのか、わからない感情。 それはおそらく孤独を味わったことのあるものへの 共感なのかもしれない。 あるいは、物語に入れ込むことによるまなざしの同化であろうか、 失われたもの、失われつつあるものへの孤独な眼差し。 ひとりで生きてゆくことの厳格なたたずみに伏した涙を そこでそっと胸にしまいなおす行為の美しさ。 ぼくは久しぶりに味わった新たな『東京物語』の哀愁の前に 自分が失ってきたものの幻影を重ねているのだろうか?