log_vol38映画・俳優

ロピュマガジン【ろぐでなし】vol.38 忘れじの刻印、フランス映画特集

ある意味、時間が止まった世界の住人として見かねない先入観から 逃れえないといえるノスタルジーを引きずっているかもしれない。 それでもそれぞれに受けた印象は、時代を経て刷新されはするものの、 その感動や印象がけして色あせることなどないのだ。 今見ても、何かしらの発見や驚きがあり、感動がある。 そんなスクリーンを通して伝わってくる作り手たちの魅力的な空気を 言葉のみで伝えるには限界があるとはいえ、 できる限り埋めうるものを中心にカタチにしたにすぎない。 これは後生大事にしまってあるガラクタの宝石箱からの発信であり 美化しようというよりは、その魅力をただ伝えたいだけなのだ。

天井桟敷の人々 1945 マルセル・カルネ映画・俳優

マルセル・カルネ『天井桟敷の人々』をめぐって

こうして出来上がった魅力溢れる人間たちの縮図『天井桟敷の人々』。 そもそも“天井桟敷”というのは 劇場の最後方・最上階にある天井に近い観客席のことをいい そこは当然料金も安く、最下層の民衆にとっての指定席で、 この映画のフュナンビュール座では「天国」と呼ばれ、 ワーワーガヤガヤと子供のように賑やかだったことから 「Les Enfant Du Paradis(天国の子供達)」と呼ばれるようになったんだとか。 いかにも演劇の盛んな国フランスならではの 文化的背景が見え隠れするエピソードである。

LE SAMURAI 1967 Jean-Pierre Melville映画・俳優

ジャン=ピエール・メルヴィル『サムライ』をめぐって 

まあ、そのあたり個人差があるだろうが 当時なら、十中八九、ドロンはまずその代名詞だった。 そんなイケメン俳優アラン・ドロンのことを思ってみる。 ふとメルヴィルの『サムライ』をみて ドロンという俳優が単に美貌だけで 世の羨望の眼差しを受けていたわけではないことを改めて理解した。 やはり、ちょっとオーラが違うのだ。

キル・ビル 2003 クエンティン・タランティーノサブカルチャー

クエンティン・タランティーノ『キル・ビル』をめぐって

タランティーノが梶芽衣子の大ファンというのはよく知られた話で、 当然のごとくエンディングに「恨み節」が流れる。 何ともニンマリするところだが、肝心の梶芽衣子の『修羅雪姫』の引用は あくまで様式美に過ぎず、『キル・ビル』そのものが背負う「復讐劇」としては 少し唐突な気配がしないでもない。 が、この異国の心の底からの熱狂マニアっぷりが高じて 撮り上げたエンターテイメントにいちゃもんをつける気は毛頭なく むしろ、面白く拝見したという意味では、 正真正銘のタランティーノ神話の、遅ればせながら ようやくその住人になれた気にはなっている。

Shock Corridor  1963年 Samuel Fuller映画・俳優

サミュエル・フラー『ショック集団』をめぐって

映画は事件をめぐる人間たちによる群像劇といえるが ショーケンと小柳との夫婦間のいざこざと愛憎をはじめ、 そこに絡むすれてない子供たちとの情感。 (ちなみに、娘役の香織は高橋かおりの子役デビューである!) また、誘拐された家族、秋吉久美子と岡本富士太夫婦と 警察組織の焦燥感の攻防。 冒頭で新聞社の部長丹波哲郎が歌うカラオケ「ダンシングオールナイト」や ショーケンとの昔馴染みという設定の女池波志乃との情事、 あるいはヘリを操作する菅原文太の登場、 若手の記者宅麻伸と恋人役の藤谷美和子の関係性などなど、 それらが果たして必要なシーンだったかどうかはさておくとしても、 救出までのサスペンスには、ノスタルジックな情緒を感じながら もっと肩の力を抜けよ、などとは到底いえないようなリアルな空気感に満ち 追い詰められた人間たちの、切迫感がヒリヒリと感じられる映画だった。

「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」1968 ジョージ・A・ロメロ映画・俳優

ジョージ・A・ロメロ『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』をめぐって

要するに、低予算、B級のくくりで考えれば 『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』という一本の映画は 映画作りそのものへの可能性や わくわく感、ドキドキ感を満たしてくれるわけだが、 まさに、映画作りの原点のような空気に満ちていると言うのか、 映画について、映画愛についてをも考えるさせられる作品なのだ。

暴動島根刑務所 1975 中島貞夫映画・俳優

中島貞夫「暴動島根刑務所」をめぐって 

『脱獄広島死刑囚』から始まって『暴動島根刑務所』 そして『強盗放火殺人囚』まで続くその三部作、 とりわけ中島貞夫による最初の二作が抜群に面白い。 ずばり、エネルギーのすさまじさは特筆に値する。 そんな脱獄がテーマだけに、並外れたバイタリティがなければ そんな大それた芸など出来るわけもないというところで、 松方のキャラがひときわぶっ飛んでいる。

Delicatessen 1991 ジャン=ピエール・ジュネ&マルク・キャロ映画・俳優

ジャン=ピエール・ジュネ&マルク・キャロ『デリカテッセン』をめぐって

B級かカルトか、そのあたりの定義はおいておくとしても 強烈な個性を放つジャン=ピエール・ジュネという映画作家は、 次作の『ロストチルドレン』やのちの『アメリ』で その名が知られるようになったと思うのだが このマルク・キャロが共同で名を連ねる『デリカテッセン』の方が 個人的にはツボ作品なのだ。

地球に落ちてきた男 1975 ニコラス・ローグ映画・俳優

ニコラス・ローグ『地球に落ちてきた男』をめぐって

そのなかで、1975年、初めて映画に挑戦の ウォルター・テヴィスのSF小説を実写化版 ニコラス・ローグの『地球に落ちてきた男』では まさに「はまり役」としてその宇宙人キャラを演じた。 ウォルター・デヴィスの原作がボウイのキャラを ふまえて書いたわけではないが、 ニコラス・ローグにかぎらず、この人かいない、 という思いは映画をみれば誰もが納得するだろう。 当人も満足していたのか、