ケイク集

言葉の意味漬けは甘いぐらいでちょうどいい

言葉を使って表現するケイクと聞けば、「警句」のことかと思うのが自然だろう。しかし、その警句なるものはここでは全く意図されてはいない。偶然に、警句的なものとして挟まってはいることは、ままあるかもしれないが、警句を鳴らす、という類の肩がこるようなものは、最初から意識にないのである。はっきり言ってしまえばシャレである。単なる言葉遊びに過ぎ図、それがコンセプトである。その意味では「軽句」と言うのがもっとも的を射ているスマートな呼び方なのだろうが、単に「軽句」と呼んだところで面白くもなんともない。そこに言葉のマジックがあり、美学が顔を出す。そこから無理に「ケーキ」と言うものに落とし込んで作った軽句たちを、ここでは「ケイク集」と名付けたに過ぎない。要するに、世に言うキャッチコピーと言うものの形態だけを無理くりにコピーして、さらに解体して意味漬けならぬ意味付けしているのである。

通常のキャッチコピーとはその言葉の向こうになんらかの対象があり、明確な意図がある。その対象を言葉を補ってさらに強調するため、より価値を高めるための、いわば飾りである。「リラックスッ。特に笑いを強要しないケイクをおひとついかが?」こうして飾られたケイクに、なにやら付加価値が備わった気がするだけだ。
ただ、原則的に、どこまでも過剰に言葉を連ねてゆくほど、元来の面白さは空回りするものだ。だから、言葉は出来るだけシンプルな方がいいのだと思う。つまり、言葉はあくまでも言葉であるに過ぎない。ただ一つ言えることは、言葉と言うものは、必ずも語り手の意がそのまま受け取られるとは限らないと言うことだ。「うさぎ追いしあの山」が「うさぎ美味しあの山」だと解釈されることになんの罪もない。そう言う軽さを逆手にとって、許容されうる表現として、その楽しさがケイク集から伝わればいいと思っている。

ショートケイク

三時のおやつは時として惨事になりかねません。とりわけダイエットに甘いものは禁物、とばかりに頑張りすぎのあなた。糖尿病で節制を余儀なくされたあなた。歯痛な叫びを上げるあなた。ケーキなどもってのほかです。それなら、軽くノンキカロリーな言葉たちで、三時のアフタヌーン・ティーでも楽しみましょう。別に、あなたの生活を改めよとか、教訓にせよ、だとか、そんなつもりは毛頭ありませんから、ご安心を。硬くなった頭のしわにグラニュー糖をまぶして、細くなった神経束に生クリームをぐるぐる乗せて、ホットするようなオーブンで仕上げるだけ。所要時間はほんのチンプンカンプン。そうしてでき上がったら、陽気なまでにに苺苺を乗せて行き、あとはお好みでアンタイッタイナニモンパウダーをはたいたり、スキニシロップなんかをたらしてでき上がり。温かいお茶目なお茶でもごくり口に含めば、ほら、ダイエットの悩みも、もろもろの悩みなんて忘れることでしょう。
 でも、ひとつだけ。もし、お腹の調子がわるくなったら、トイレなぞには駆けこまないで、そこは紳士、淑女としていきに「霧の言葉」にでも包まれてしまいましょう。それでは、ごゆっくりと召し上がれ。

パンケイク十選 監修 近代司 原語郎

  • 我を忘れたトースト、判決はクロ
  • 初絶句、大人への一歩
  • 当り屋、イタリア式、巻き上げチャーオ!
  • 総ゲイバス、おかま掘られて、いやあねえ
  • いつだってひぇ~症の女の子
  • 座席詰め上手、元やくざにつき
  • 螺旋階段にてスパイ気絶
  • ほくほく性に暗雲あり
  • あの亀、老人ホーム訪問、浦島さん涙
  • もしゅものための保険学
  • 幅ないっすね、そちらこそ
  • ハッピーバースデイ空輸
  • メスもうさん、土俵から締め出し
  • 田舎者、自主帰省

パンケイク十選 監修 近代司 勘具郎

  • おしゃべりな主人公、つい「」つけがち
  • 毛深いコンピューター、処理に負われてじゃあね
  • 短針生活お手柔ら蟹、はさみで握手梅干し業界
  • 大唾液煎餅ヒットチャート、ほとんど相手にされず
  • 神様直々の手作り人間。モワ、ノンブル
  • 夏でもエリマキトカゲ自分を曲げず
  • 北枕、格安死体体験ツアー
  • いえねえ、ホームレスの悩み
  • はっぽう美人は恋の一撃にて伏す
  • 寛容植物、日照りにも涼しげ

ホットケケイク十選 監修 近代司 勘慈郎

  • ハート・コレクション公開、死後日記にて
  • ひんしゅく駄洒落ヌーボー、出荷停止処分
  • 白線より鬱側には行かないで下さい
  • マザー発火
  • 隠れん坊性分、みっけ!
  • 桃太郎まっぷたつ、血染めの包丁大捜査
  • 教室、一限さんまばら
  • オバQ線、犬連れ乗車拒否
  • そばかす、星座探しゲーム
  • ヤドカリに寄生概念
  • インタヴュー敢行帚、いわゆる股具なり
  • グレゴリラ聖歌隊、聴くに絶えず