伊藤俊也『誘拐報道』をめぐって
この作品、キャスティングが素晴らしいのだ。 まず、ショーケンと小柳ルミ子この組み合わせがフレッシュに活きたと思う。 いずれも伊藤たっての希望だったという。 ショーケンは、この映画のために10キロも減量して臨み、 まるでドイツ表現主義的な形相で、鬼気迫る誘拐犯を熱演すれば、 小柳ルミ子はここで映画初出演とはいえ、 大胆な汚れ役を厭わず、それまでのイメージを覆すが如く 誘拐犯の妻を、文字通り身を投げうつような覚悟で演じ切った。 以後、彼女のキャリアを前に大きな爪痕を残したといっていい