映画・俳優

ダニエル・シュミット『トスカの接吻』をめぐって

ダニエル・シュミットのドキュメンタリー映画『トスカの接吻』について書いてみよう。 初めて見た時の感動は忘れないのだけれど、 年齢を重ねてみる感慨はまた違うものだ。 同時にいろんなものが見えてくる。 人間は歳をとっても本質的に変わらないものだっていう、そんな見本がここにある。 いいんだわ、老人たちの顔がね、素晴らしいの。

SAKANA LASTLIVE音楽

SAKANAをめぐって

個人的に随分と親しんで来たこのさかなについて書く、 あるいは語るとなると、なんだかとりとめもなくなってしまうはなぜだろう? その長い活動履歴、豊富なディスコグラフィといった量的な絶対性よりも、そぎ落とされた音、想像性に飛んだことばや非凡なメロディへのこだわり、 それらに呼応するかのような慎ましい活動や動向といった存在の本質的な部分が、 何にもまして魅力的なさかなの前には、しばしことばを失うのである。

メトロン星人サブカルチャー

ウルトラセブン・実相寺マジックをめぐって

この宇宙人に子供心に心奪われたのは、 青赤黄、原色のよる魚類っぽいシュールな頭部を持っていたからではない。 その登場になにやら親しみを抱いたからだろう。 なにしろ、四畳半一間のアパートの一室で、 モロボシダンとちゃぶ台を挟んで会話をするシーンが なんともいえぬお茶目な哀愁を漂わせていたからだ。

Le Déjeuner en fourrureアート・デザイン・写真

メレット・オッペンハイムをめぐって

流れゆく雲、廃屋のようなセット、 水溜りに浮かんだ顔が風で震える。 白い馬。そして子供と老人。 「i(私)」と書かれた風船が空に舞う…… イメージの断章、それは記憶の中の一風景なのだろうか。 ミュージシャンのポートレイトでその名を知られ、 数々のミュージッククリップや映画をも手掛けている オランダ人の写真家アントン・コービン、 そのプロデュースによるデヴィッド・シルヴィアンのシングル 「Red Guitar」(1984)でのモノクロームのクリップビデオに登場するのは、 英国の写真家、変わり種アンガス・マックベインという老人である。