勅使河原宏『砂の女』をめぐって
砂に溺れて 文学の映画化は失敗に終わるものなどと、往往にして言われるところであるのだが、中には、文学を凌ぐ作品もあるのだから、ひとえに否定はすることはできない。そもそもが人々を言語で魅了した世界をなんとか視覚化したい欲望...
砂に溺れて 文学の映画化は失敗に終わるものなどと、往往にして言われるところであるのだが、中には、文学を凌ぐ作品もあるのだから、ひとえに否定はすることはできない。そもそもが人々を言語で魅了した世界をなんとか視覚化したい欲望...
世論に押された文句より、魂に響くモンクのほうに耳を傾けていこう このコロナ騒動に乗じて丸一年、どこか人同士が憎しみ合うようなギスギスした感じが横行している。そして充満するのは疲弊と不満ばかり・・・まったくもっていやになっ...
肉を縛って、心を放つ、男と女のリビドー道巡り 「官能」というテーマから考えていくと必ずぶち当たるのが、倒錯の美意識である。ここでは、単刀直入にSM映画といってしまおう。かの団鬼六氏によるSM作品の原点にある『花と蛇』は企...
地獄にて戯れる、少女たちの復讐のエロス 中高と6年にもわたり、ひたすらむさ苦しい男子だけの学校に通っていたから思春期の男の子のことはそれなりにわかるがこれが女子ともなると、想像の域を超えない。 一般には“箸が転げてもオカ...
不思議の国のヰタン・セクスアリス 曽根中生によるロマンポルノ『わたしのSEX白書 絶頂度』について語る前に、その充実した自伝書籍『曽根中生自伝 人は名のみの罪の深さよ』を手に、読んでみるとこれがなかなか面白い。曽根作品の...
戦火の中で平和と愛を夢見たユダヤ人、 旧ソはリトアニア出身の写真家 イスラエリス・ビデルマナスは、 フランスに亡命し当初は画家を志望するも、 おそらくは生活の為に、 写真を選ばざるをえなかったのだろう。 フランスに帰化してまでそのパリに活躍の場を求め イジスという名で、主に「パリマッチ」のフリーランスカメラマンとして活躍し 「何も起こらない場所のスペシャリスト」と称されたのだった。
ライカというと、真っ先に思い浮かんだのが、 アンリ=カルティエ・ブレッソン、 フランスの著名な写真家であることは言うまでもない。 写真家集団「マグナム・フォト」で有名だ。 “決定的瞬間”をカメラで切り取ることに長けた写真家ではあり、 それらの写真もとても魅力的なのだが、 ここでは、むしろ、そうした観点をはなれ、 我々日本人には馴染みのある 日本座敷の静謐な一枚を巡って、考察して見よう。
「写真」とは、「ほら」、「ね」、「これですよ」を交互に繰り返す、一種の歌に他ならない。 『明るい部屋』みすず書店 ロラン・バルト(花輪光訳)より 写真というものについて、日々撮るのに夢中な人は増えたと思うが、果たして、何...
それにしてもドミニクの目ヂカラが半端なく凄い。 まるで、相手を射抜いて石にでもしかねないかのように強く鋭い。 バスタブでおとした石鹸を夫から手渡されるシーンをみよ。 それがどこかで悲劇に直結していると思うと、胸が締め付けられる。 だが、夫との視線で癒やされることは一度もない。 心の距離もまた、縮まることがない。 表情が緊張から解かれることがないのだ。 まるで手を離れた凧のように、離れてゆくばかりである。
そんなヴィスコンティ版 「白夜」においてのマストロヤンニは 別にちょいワルでも色男でもない。 夢想家というか、恋というものに ただ幻想をいだく純情な男を熱演している。 そこには、いささかも外連味もなく、 人としての魅力を最大限にスクリーンに滲ませるのである。 何よりも初々しいのだ。