龍馬暗殺 1974 黒木和雄 ATG映画・俳優

黒木和雄『龍馬暗殺』をめぐって

時は、安政3年11月13日〜15日にかけての まさに怒涛の幕末の暗殺劇を凝縮した形だ。 いわゆる近江屋事件を、低予算ATG制作、 ドキュメンタリー畑の黒木和夫監督が 豪華な俳優陣を引き連れメガフォンを撮った異色作である。 前衛でありながらも、決して個としての龍馬の魅力を損なず、 そのまま原田芳雄の魅力と相まって この不朽の英雄伝に、一転アウトローが醸す、 人間臭さを大いに巻き込んだ群像劇へと標榜させている。

アパートの鍵貸します 1960 ビリー・ワイルダー映画・俳優

ビリー・ワイルダー『アパートの鍵貸します』をめぐって

好きなクリスマス映画を10本あげてみな、 ってなことをとっさに言われたとして、 『スモーク』に『戦メリ』に、あとなんだっけか? なんて言っているぐらいだから、 そもそもがどうしようもないんだけれど、 で、よく考えてみれば、こいつもクリスマス映画って言えるのかな、 そう思って浮かんだのが『アパートの鍵貸します』

SMOKE 1995 ウェイン・ワン映画・俳優

ウェイン・ワン『スモーク』をめぐって

その名もずばり『スモーク』って映画は、 ニューヨークでたばこ屋を営むひとりの男をめぐる物語。 ポール・オースターの短編 『オーギー・レンのクリスマス・ストーリー』がまずあって、 そこから映画用にオリジナルでオースターが書き下ろした脚本を ウェイン・ワンが映像化した珠玉の映画だ。 日本では90年代にミニシアターで上映され、 多くの人々の心をわしづかみにしたっていう、 とってもハートフルなストーリー。 誰の身にもついてまわりそうな、 それでいてひとつひとつが実に誠実で、 つい心にひっかかってしまう話で構成されている。

merry xmas音楽

メリークリスマス。ミスターミュージック。

クリスマスという日に、聴くべき音楽が色々とあるってな事を考えるだけで 幸せな気分が舞い戻ってくるってのは本当だ。 本当は、コレだけ毎日音楽ってものを浴びているけど クリスマスのバリエーションってのはそんなに増えてはない気がする。 そんな昔から聞いてきたクリスマスの音楽を、 ここに書き出してみようかって思う。

ロピュマガジン【ろぐでなし】VOL6.年末増刊号特集

ロピュマガジン【ろぐでなし】VOL6.年末増刊号

それこそ音楽なら豊富に浮かんできるが、 映画や文学となると、やれ恋人と、やれ家族と といった副次的快楽を共有するようなものを 得意げに差し出すような気の利いた感性は持ち合わせおらず、 ひたすら、己の琴線に触れてくる、 微妙なものを独断的、偏愛的に取り上げているに過ぎない。 しかし、あえて言葉を添えるなら、 これほど殺伐とした世の中で、 どこへ言っても他人の視線、他者との関係性を無視できない中で まずは、自分という個をしっかりとあらわにして 超然たる思いで、この年末を軽やかに乗り切りたい。

人妻集団暴行致死事件 1978 田中登映画・俳優

室田日出男スタイル『人妻集団暴行致死事件』の場合

ラストシーンは驚くほど能天気な執行猶予付きのカップルが 颯爽と自転車で楽しげに並走して終わる。 この無常観は、風呂場でいとしげに死体を清めた 室田日出男の哀しさとは真逆のものである。 快楽と無軌道は唐突なことで日常を揺るがすものだが、 といって、誰もがそこで立ち止まることはない。 川の流れのように続いてゆくのだ。 やるせない気だるさだけがそこにある。 そうした空気が全身にまといついて離れない。 ちょっとした衝撃を受けた。

㊙︎色情めす市場 1973 田中登映画・俳優

芹明香スタイル『㊙︎色情めす市場』の場合

その芹明香演じる十九ピチピチの若く蓮っ葉な娼婦が、 日夜たちんぼうをしながら、男を漁り渡り歩くわけだが、 ギラギラ夏の太陽が照りつける大阪のドヤ街の片隅で 「うちなぁ何か逆らいたいんや」 そう呟くオープニングシーンのふてぶてしくも、 たくましさと気だるさとともに、思わず視線に緊張が走る。 けれども一時間強のドラマを観終わった後には そんな彼女が実に愛おしくなってくるのだ。

しゃぼん玉 2017 東伸児映画・俳優

市原悦子スタイル『しゃぼん玉』の場合

市原悦子というと一連の「家政婦を見た」で つとに名前が通っているのだが、 長谷川和彦『青春の殺人者』で見せたあの狂気の母親像をはじめ、 独特の存在感をもつ女優として この映画を通してもっと評価されるべき姿を 純粋に突きつけられた気がしている。 同時に、そんな女優がこの映画を後に この世から去ってしまった現実に一抹の寂しさが募る。