[門戸無用]MUSIQ VOL.4

[門戸無用]MUSIQ

秋が好きだ、秋はいい、素晴らしいなどと
まるで三流詩人にも値しない凡日常人的言葉を
適当にならべているのだが、
秋という季節は内省的人間にはすこぶる刺激的
というか、ロマンチックな季節であることは間違いなく
それゆえ無様に乙女チックなセンチメンタルにおぼれるか
はたまた文学青年風にポエティックに毒づくか
せいぜいそれぐらいの差でしかないのだ。

また、秋といえばどうしても
月というものへの畏敬の念がつのり
その分文学的になったり、ロマンティックになったりするのではないか?
と自分では分析している。
月をみて、オオカミに変身したり
やれフランケンシュタインのように怪物になったりする、
いうなればファナティックなシンボルではあるが
古今東西、この月をめぐる創造のイメージには
枚挙にいとまがない。
そう、今こそ自分のなかにある太陽と月の対比をじっくり見比べてみるべし。

そんな月をみながら聴くのもまたオツな音楽たちをとりあげてみよう。
名月をとってくれろ泣く子かな、という一茶の名句を書き換えて、
「名盤をとってかけろと笑む子かな」
いやはや、そんな怪童に出くわしたいものだ。

我が家の秋の夜長のミュージック定番セレクション其の参

Vincent Gallo: When

Vincent Gallo: When

これってローテクそれともハイテク? よく聴くとこれって実は音響派なんだよね。
バッキャローなオタク天才ぶりにはこまったくお手上げだ。おまけに生粋のひねくれものゆえにだれにでもわかる代物じゃねぇとくる。こういうのが実はもっとも最強なものってことに気づかぬやつは、この先未来の音楽を語る資格なぞない。それにしてもなんてこうブルーなのさ?
でもって、なんでそんなすばらしいの?憎いね、このギャロー!

The Velvet Underground/The Velvet Underground III

バナナのレコオドやトランスフォーマ-でのサイケ頽廃ぶりに至る衝撃は、たしかにすごかった。が、このVUIIIに漂う静謐なまでのピュアネスにどれほどいやされたろうか。いまや死語かもしれぬネオアコのルーツであり、後期ルーの安定に似た平穏をも見て感慨にふけいります。
「Pale Blue Eye」「Jesus」といった忘れがたき永遠の名曲たち。そりゃあカバーはあとをたたないのも納得。

Chet Baker Sings:Chet Baker Sings

チェットのボーカルが聴きたくなる周期があります。秋とか夜更けとか、真昼とか、
ロマンティックというよりたいていは凹んでいるときのお伴。このアルバムうんと堪能できます。
ややもすると、ムードミュージックなどと混同されがちな、甘くけだるいメローさのなかに、どこかに毒のような、孤高のやるせなさ、いわゆるブルースの香りがあって、そこに蝶ではなく、蛾のようにあつまってしまうというのが、わたくしのチェット愛でございます。

John Hiatt:Bring The Family

John Hiatt:Bring The Family

まさにアメリカの心・・・ジョン・ハイアット。このアルバムはとても具合がよろしい出来なのであります。
というのも、参加メンツが、どやつも信頼のおけるミュージシャンたちの共演での名作というわけです。
ライ・クーダー、ジム・ケルトナー、ニック・ロウとの4人。悪いわけがございません。
以降「リトル・ヴィレッジ」へと続くのでした。

Caetano Veloso:Federico e Giulietta

旅は何もアメリカだけではない、こちらはブラジル⇔ヨーロッパの魂の旅。
偉大な魂には偉大な魂が宿る。泣きどころを最小限度にとどめながら、心に永遠に記するところの郷愁。
それって、いわゆるフェリーニの映画の根底にある感覚、つまりはイタリアのサウダージかな?? 
知的な人間がさりげなくみせる限り無く自然なまでの人間への慈しみ、オマージュを体験するならこれ。
カエタノセンセイほど「粋な男」をおいらは知らない。

Maju:Maju1~3/

聞きなれないHOSOMI SAKANAって人のMAJU名義の上質アンビエントミュージック。
でもとにかく気持ち極上アンビエントです。アンビエント好きには是非聴いて欲しい。
あのジム・オルークも絶賛する影の実力者は、実はいろんなバンドにてpfとして活躍してたりします。
例えばシオンとおちゃんのバックもやってるね。この鍵盤奏者はドイツのMille PlateauからはNEINA名義でアルバムをリリースしてたりするので、海外のほうが有名なのかもしれない。とにかく素晴らしい。

Djivan Gasparyan:I will not be sad in this world

Djivan Gasparyan:I will not be sad in this world

アルメニアの民族楽器Dudukをフィーチャ-したジバン・ガスパリアンのソロアルバム。
中央アジアの乾いた風の唸り、そして歴史的な深い背景を宿したDudukの音色は、まるで魔法のように巧妙に催眠効果をもたらす。静謐でありながら、スピリチュアルでありながら、
すこぶるやさしい音色。さすがはグルジェフ生誕の地、奥行きがあります。煙に巻かれてねちゃいます。
イーノのOVALからのリリース。

Miles Davis:死刑台のエレベーター

ルイ・マルの代表作でもあるが、マイルス抜きでは語れまい。
フィルムモダンジャズがかなり映画に使われ出した時期があるけれど、そのなかでもこいつは傑作中の傑作だろう。
マイルスがフィルムのラッシュを見ながら即興で演奏したその録音盤であるサスペンス映画を盛り上げるためのすべてがここにあって
あらかじめ用意されていたかのように、完璧なまでに映画をサポートしている。

Nick Drake:Pink Moon

まるで稲垣足穂センセイにささげたいようなタイトルとジャケット。
天才ってやつは神様がいつだってすぐにでも天のおひざもとに呼び戻したがるんだな。
桃色の月の下、これからだっていうのに。
のっぽのギター弾きニック・ドレイクもまた、神様のいじわるでつれてかれちゃったんだ。
でもね、こんな素敵なアルバムが残っているんだよ。
ピアノも弾くし、唄も渋いんだよ。
なんたって天才なんだからさ、
ただ、ちょっとばかり一人になるのが好きだっただけなんだよ。

Wilhelmenia Fernandez /Sings George Gershwin

たまにはオペラなどといっても敷居はそんな高くはない。
ベネックスの「DIVA」に唄姫役で出演、それを観て実際ひとめこの唄に惚れました。
ウラジミール・コスマのサントラ盤もよかったな。
映画の主人公はこっそりコンサートを盗み撮りしたわけだけど、わかる気がします。(でもいけない)もちろん、これは海賊盤なんかではございません。
またサントラではないけれど、どこか厳かで気品に満ち満ちていて心があらわれます

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